私が栽培しているのは田んぼにどじょうを放流する「土生米(どじょうまい)」。その名前は放流したどじょうが産卵し、生まれた稚魚が元気に育っていけるほど安全な田んぼであることから、“生きた土から作られるお米”として名づけられました。
そんな自然から認められる環境を作るために、いつも心がけているのは「注意深く観察する」ことです。毎日変わる田んぼの状態もよく観察すれば、次はどうなるのか大体予想がつきます。大切なのは作業を行うタイミングで、例えば害虫対策の草刈りも、最適な時期に行うことで農薬の使用回数を抑えることができるんです。
そうして作った土生米は、北海道が定める農薬・化学肥料の使用基準よりも厳しい「YES!clean」に登録された減農薬米です。安全・安心で環境にも優しい土生米、その美味しさを多くの人に知ってもらうことで、ふるさとが活気づいてくれたら何より嬉しいです。
JAみねのぶ 米づくりを考える会
鈴木 孝典
もともと東京やイタリアのレストランで料理人をしていましたが、祖父母が手放しかけた農地を受け継ぐ形で美唄に戻り、農業を始めました。
私のこだわりはバランス技術を用いて取り組む新しい自然栽培「バランス農法」です。自然と共存するための新しい技術で、専用のデバイスを畑に設置することで土中のバクテリアを活性化させ、農薬や肥料を使わずとも立派に生育できる環境を整えることができます。収穫した野菜は青臭さもなく、特にトマトは苦手な人でも「これなら食べられる」と言われるほど好評をいただいています。
夢は、自慢の野菜を一年中楽しんでもらえるファームレストランを展開すること。その第一歩としてトマトジュースの製造・販売を行なっていますが、今後はトマトの茎や葉を粉末にしたお茶など、新しい加工品にも挑戦していきたいです。そうしたたくさんの製品や料理を用意することで、私の畑をまるごと食べてもらえるような体験を提供できたらなと思っています。
あぐりこ園 井澤 勇太
約130年続く家族経営の農家として、お米やサツマイモ、トマトなどの栽培をしています。すべての作物で大切にしているのは、一番美味しい状態で食べてもらうこと。極力農薬を使わないことはもちろん、例えばお米では積雪地域ならではの雪冷房を活用しています。冬に集めた雪を使うことで夏の間も涼しく保管できるので、一年中美味しさを保つことができます。
サツマイモの場合は逆に寒さに弱いので、収穫後は手早く出荷。また、栽培している紅はるかという品種は干し芋にも向いているので、自社で加工した商品の販売もしています。トマトの場合はお客さんが自ら収穫する直売スタイル。熟し方の好みに合わせて自由に選べるので、お客さんからも好評いただいています。
これからの目標は、いろんな人が楽しめるように加工品の種類を増やしていくこと。特に干し芋は大人向けのブランデー味など、新しい商品の開発に挑戦していきたいです。
貞廣農場 貞廣 樹良
私が作る「香りの畦みちハーブ米」は、人と環境に優しいクリーンな農業として「YES!clean」に登録された減農薬米です。大きな特長は、繁殖力の高いアップルミントを畦に植えること。そうすると害虫が発生する原因であるイネ科の雑草が生えなくなるので、結果として農薬の使用回数を抑えることができます。
また、一般的にお米は低タンパクなほど甘く粘り気があって美味しいとされますが、タンパクの量は土の質に由来します。だからお米作りのこだわりは、実は田んぼ選びから始まっているんです。一番嬉しいのはやっぱり収穫の時。質の高いお米がたくさん穫れた時は大きなやりがいを感じますね。
今、日本では食の多様化などによってお米の消費量が減ってきていますが、正直、味の質はどんどん良くなっています。だからこそ、美唄市の「みねのぶ」から生まれた自慢のお米を、ぜひ多くの人に食べてみてもらいたいです。
JAみねのぶ 香りの畦みちハーブ米生産部会 中村 呂仁
私が作っているのはお米やサツマイモ、オクラにリンゴ、ワイン用のブドウなどなど。そのどれもが農薬や肥料を一切使わない自然栽培にこだわっています。
大切にしているのは「見えないものまで考える」こと。土地を流れる水や空気、土の中などの条件が生育に影響するので、それらを踏まえてできる工夫は何でもしています。例えばビニールで畑を覆う「マルチ」という方法で保温や保湿を助けたり、時には種を植える場所や数なども調整して、その土地の力を最大限に活かした栽培を心がけています。
毎年条件を探りながらのトライ&エラーは大変ですが、芽が出た時は子どもを育てるような生きがいを感じますし、食べて喜んでもらえた時はやっぱり嬉しいですね。自然栽培で作られた野菜や果物は密度が高く歯ごたえがあり、お米はやさしい味がします。多くの人にその美味しさを知ってもらって、自然栽培に少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。
清水自然園 髙橋 誠
北海道の中でも気温が高い美唄市は、有名なニンニクの産地である青森県と環境が似ています。牧野農園ではそんな有数な条件と広大な地を活かしたニンニク栽培をしています。
こだわりはニーズに合わせた栽培方法で、消費者に向けた化学肥料を減らす取り組みのほかにも、例えば取引先が求めるサイズによって栽培方法を変えるなど、販売目的に合わせた工夫もしています。また、うちのニンニクは糖度が自慢です。一般的には約40度と、もともと果物より高いニンニクですが、うちのは45〜50度くらい。これが黒ニンニクに加工されると67〜70度にまで上がります。旨味と甘味が凝縮したフルーティな味わいはぜひ体感してほしいですね。
夢はニンニクで世界一になること。若い頃に持った夢はもういくつか叶えたので、飽きないようにアップデートしました。何の世界一になるかまでは決めていませんが、日本一も通過点にして、ずっと楽しくやっていきたいです。
牧野農園 牧野 健仁
美唄稲作振興会では、振興会員のお米を食べ比べて、その年一番評価の高いものを「匠の米」として販売しています。味、つや、香りなど総合的な審査で決められる同ブランド米ですが、この度私が作った「おぼろづき」が、2021年の「匠の米」に選出していただけました。
昔から農家には「苗半作」という言葉があって、苗の出来で作柄が半分決まると言われています。田植え前のハウス作業では草取りや水の調整といった細かな管理が続きますが、少しの気の緩みがお米の味に影響すると思って、毎日手間をかけて丁寧に面倒を見ています。だからお米を食べた人から「美味しい」と言ってもらえると、苦労が報われたようでやりがいを感じますね。
お米の消費量は減っていると言われていますが、未来の子どもたちが食べ物に苦労しないためにも、農業の継続は大事だと思っています。今以上に美味しいお米を作っていくので、皆さんにはどうか食べてもらうことで応援してもらえたら嬉しいです。
JAびばい 美唄稲作振興会 桑折 尚宏